【巻頭エッセイ】

「『救国』国民連合は可能か？」

　　　　　　　　　　　　　　　　　日本文化チャンネル桜代表　水島　総

四月二十四日と明日、千葉県都賀という場所の水田で、チャンネル桜
二千人委員会の有志の皆さんが田植えの準備の畔(あぜ)作りを始める。
五月四日と五日には、田植え作業がある。
この無農薬の米作りは、もう何年も続いているそうである。
高齢で農業が続けられなくなった農家から水田を借り、有志の皆さん
自らの手で米を作る。

この水田から収穫される米は本当に美味い。
私もおすそ分けでここの玄米をいただくが、ええっ！これが玄米かと
思わず声を上げたくなるほど美味しい。
ここの水田は印旛沼からの水利状態が良く、ずっと大昔から米作りが
されていたらしい。

畔作りから田植え、草取り、稲刈り等々、「人力」で行われ、稲刈りを
やると数日間、全員腰が痛くなるそうだが、嬉しそうに話してくれるのを
見ると、随分皆さんが楽しんでいるのがわかる。
また、近くにいくつか温泉があり、作業後、温泉に入ると全員、極楽極楽
を連発し、皆で飲むビールやお握りは、本当に美味いらしい。

今年は松浦杉並区議等も加わり、毎年少しずつ人数が増えているようだ。
「社長もビール飲みにだけでもいからどうぞ」と誘っていただいているので、
いつか参加したいと思っている。

何よりもこの「米作り」を語る時の皆さんの爽やかで生き生きとした表情
が良い。
美しいと言ってもいいくらいで、その顔を見ただけで、やっぱり日本は
いいなあと、私自身が元気になる。

この一時農民ともいえる米作りメンバーのほとんどは、「頑張れ日本！
全国行動委員会」として様々な救国活動に参加していただいている。
昔、左翼がむしろ旗をたててデモしている姿があったが、今度は私達も
「一時農民」らしく、むしろ旗に「救国」の文字を書いてデモをしようか
などと話している。　

西郷南洲翁は、その遺訓の中で、
「政の大体は文を興し、武を振るい、農を励ますの三つにあり。その他
　百般の事務は、皆この三つを助けるの具なり」
と述べている。
まさにその通りで「農」を「工業」に変えることは出来ないのである。

我が国が「瑞穂の国」と称すように、米作りは日本農業の根幹というだけ
ではなく、日本人の精神構造の根幹をも形作っている。
講演などで私は
「水田は単なる米の生産工場ではありません。水田は日本人の心を作る
　大事な場所です。米作りもまた、自然と時間と対話しながら行う日本人
　の精神形成を為す作業であり、単に米という商品を生産する場所では
　なく、米作りによる人のいのちと魂を形成する場所です。だから、農業
　を単なる金銭価値だけでとらえるべきではありません。水田風景こそ、
　私たちに時の移ろいを感じさせると共に、いのちの誕生と成長、再生を
　細やかに感じられる精神風土を与えてくれる場所なのです」
等をお話させていただいている。

最近ではとんと歌われなくなったが、井上赳作詞・中山晋平作曲／文部省
唱歌の「田植」がある。

　　そろた　出そろた　さなえが　そろた
　　植えよう　植えましょ　み国のために
　　米はたからだ　たからの草を
　　植えりゃ　こがねの花が咲く

　　そろた　出そろた　植え手も　そろた
　　植えよう　植えましょ　み国のために
　　ことしゃほう年　穂(ほ)に穂が咲いて
　　みちの小草(こぐさ)も　米がなる
　
この歌詞の中の「み国のために」の部分は終戦直後の小学校では、
「みんなのために」と変えて教えられた。
御国という言葉の持つ広く深く重層的な意味が、「みんな」という意味に限定
され、「御国」がまるで、何か悪い言葉でもあるかのように「刷り込まれ」始め
たのは、GHQの命令だろうが、まことに情けない限りである。
　
さて、タイトルの「『救国』国民連合は可能か？」とはかけ離れた米作りの
話ばかりだと思われるかも知れないが、実は保守の救国連合は、「田植え
作業」と言いたいのである。
「御国」のために、それぞれ別の思いや思想を抱いた人々が「御国のため
に」「みんなのために」共に、共同作業で「黄金の花」を咲かそうというわけ
である。

私たち「頑張れ日本！全国行動委員会」では、民主党の反日・亡国独裁政
権打倒の為に、大きく懐深い「救国」国民連合の必要を痛感している。

数週間前、私は、安倍晋三元首相（「創生『日本』」会長）と平沼赳夫「たち
あがれ日本」代表、山田宏「日本創新党」党首に直接お会いし、参院選挙
前に一同で集まってもらい、反民主党政権を国民に訴えて、「風」を生み
出したいとお話しした。
三者とも趣旨を御了解いただき、同じテーブルについてくれることになった。
私は国民新党にも参加を呼び掛けている。

スケジュールも、参院選挙公示直前の六月二日か九日のどちらかで、砂防
会館別館・シェーンバッハサボーで「『救国』全国国民総決起集会」を開催
することを決定した。

この意義は、政党間同士の話し合いではなく、「頑張れ日本！全国行動委
員会」という草の根（草莽）国民運動体が呼びかけて実現することである。

大同団結とは、思想信条の一致では無い。
「田植え作業」のように、御国のために、みんなのためにという「願い」や
「祈り」「情念」によって、主導されなれければならないのである。

あれこれ、道端で理屈だけを語って「田植え作業」「米作り」に参加しようと
しない人間は多い。
私は何よりも、良き思いと祈りの心で、汗まみれ泥まみれになりながら
田植え作業に加わる人間を信ずる。
田植えが下手でも、作業がのろくても、一本一本、苗を植える作業をする人
に、「米」は必ず応えてくれる。
　
私たちの「頑張れ日本！全国行動委員会」は、「宝の草」を日本現代史に
植えようとしているのである。

いつか、皆で笑いながら、宝の草から出来た美味い握り飯をほおばりたい
ものである。